えんのしたの
まつしたさん

Project Story

橋をとおして
風景をつくることが
地域の未来を
つくることになる

“松下さん”はいつだって縁の下の力持ち。建設工事をとおして、目に見えるものから目に見えないものまで、ずっと地域と人々の暮らしを支えてきた。
創業66年。多岐にわたるプロジェクトのなかから、2つの物語にスポットを当てる。

Project / 01

熊本3号湯浦川橋外舗装工事

2015.4 〜 2015.10

会社の屋上に登ると、遠く向こうに湯浦川橋が見える。蒼々とした空の下に堂々と立つ大きな白い橋。それはすでに、芦北町の風景の一部となっている。その橋を見つめながら、懐かしそうな、少し誇らしそうな。そんな表情を見せるプロジェクトリーダーの池﨑に当時を振り返ってもらった。
九州縦貫自動車道と並ぶもう1本の“九州の縦軸”。2015年、松下組は、高規格道路の「南九州西回り自動車道(八代市-鹿児島市間約140km)」内の芦北出水道路(芦北IC〜津奈木IC間)における、もっとも長い橋である湯浦川橋(のちの湯浦温泉大橋)の舗装工事に携わった。

PROJECT READER TOMOKAZU IKEZAKI

プロジェクトリーダー 池﨑 友和

Story. 01

地域の明日に
貢献するために

現在、南九州西回り自動車道は、九州縦貫自動車道(八代IC)から水俣ICまでが供用され、年間200件を超える救急医療活動(管外搬送)など、さまざまな場面で地域のくらし・産業・経済の支えとなっている。また、災害時における国道3号や主要地方道の代替道路としても、熊本県南(沿岸地域)における住民の安心・安全に大きく貢献している。

「湯浦川橋は、国道3号と肥薩おれんじ鉄道をまたぐ橋です。今回の『熊本3号湯浦川橋外舗装工事』は、国土交通省発注の舗装工事で、本社のある芦北町湯浦をまたぐ湯浦川橋において、排水性舗装工(4,000m2)、橋面防水工(4,000m2)、伸縮装置工(6カ所)・配管工(950m)を受注・施工したもの。ちなみに桁(けた)工事は、「張り出し架設工法」と呼ばれるコンクリートを打設し、桁を延ばしていく工法が採用されています。約400mほどの長い橋だったため、地域の人々も『一体何ができるんだろう?』と興味・感心が高い工事だったと思います」。

実際、「あれは何をつくってるの?」と地元の方に声をかけられることも多かったという。松下組が手がけたのは、「橋づくり」のいわば仕上げの部分。現況調査・測量、配管・配線工、調整コンクリートの伸縮装置工、橋面防水工…いくつもの工程を経て、舗装工事は完成へと近づいていく。

Story. 02

地元である
強みを生かして

今回現場代理人をつとめた池﨑は、社長の代理という立場で、役場や発注側との折衝を行った。さらに現場を取り仕切る監理技術者、担当技術者との細やかな打ち合わせを行いながら、慎重にプロジェクトをすすめた。伸縮装置工や配管工では常時5〜6名のメンバーを投入、舗装工になると約10名もの技術者・技能者が関わるプロジェクト。芦北町〜津奈木IC間の供用を控え、芦北地区だけでも14もの工事が同時期に発注されたことから、当初は施工計画の段階で計画工程の遅れが懸念されていたという。そこで、地元業者である松下組に期待されたのは、“地元であること”の強みだ。

「国交省の仕事は、過去の工事実績や審査にもとづき、各社が競争入札を行い受注するという流れです。この工事は大手ゼネコンのような大きな舗装会社ではなく、熊本県内の舗装会社に発注する形式になっていました。ずっと地元に根ざして仕事をしてきた当社としても、どうしてもこの案件を獲得したいという思いがありましたし、やはり地元の案件に関われる喜びというのは大きいです。個人的には国交省の仕事に携わるのは初めてのことでした。工事が始まってからは、工事間の連携を図るために『芦北地区工事連絡協議会』を設立し、地元である当社が協議会の会長を請け負いました。毎週1回の工程調整会議を行い、各社の工程調整や地元の要望をひろいあげ、情報共有を大切に。その結果、工程の遅延や地元から苦情もなく、発注者から非常に高い評価を得ることができました。また、その評価や成績が現在の工事受注につながっていると思いますね」。

Story. 03

橋のある
風景をつくる

そうして完成した橋だが、発注者側と松下組の発案により、工事期間中にユニークな取り組みを行った。夏休み最初の日曜に「湯の香みちづくり見学会」を開催。地元の方を対象に、工事中の橋のコンクリート床版への落書き大会や工事用重機・車両の乗車体験、記念写真撮影やパネル展示を開催した。

「地元で仕事をしていますから、『あ、松下さんいま上の橋(の仕事)をやってらっしゃるんでしょう?あそこにのぼってみたいんだよね、どんな景色なの?』なんて声をかけられることが多くて(笑)。この工事にたくさんの地元の方が興味を持ってらっしゃることがわかりました。そこで、地元の夏祭りの準備集会を利用して、橋の上でイベントをしたらどうかと提案したんです。当日は約200人に参加していただきました。一般的に、工事中はもちろん立ち入り禁止。完成前の橋の上を歩いたりできる機会なんてまずないですから、子どもから大人まですごく喜んでもらえて。嬉しかったですね」。

子どもたちが絵を描いた床版はきれいに舗装され、もう見ることはできない。いつか大人になった彼らがこの橋を通るとき、「ここに絵を描いたことがあったね」と思い出すことがあるだろう。建築を通して暮らしをつくることが、地域の未来をつくっていく。風景をつくることは、そういうことなのかもしれない。